「成功する」塾選び 10の観点

学習塾の経営コンサルタントが教える、正しい塾選び

2.大手がいいか地域の小さな塾がいいか

あなたの住んでいる地域にもよく見る塾はありますね。今、大手の塾が創立40年なんかを迎えていますので、もしかしたら自分自身が通っていたというお父さんお母さんもいるかもしれませんね。それに対して、一定の地域に根差して、小さいながらもがんばっている塾もあります。1.で、集団か個別か決めたら、次は大手がいいか小さな塾がいいかを考えましょう。

結論から言うと、これも決定的な違いはありません

大手は、大きな建物、きれいな見た目、自社ビル、教材もテストのシステムもしっかりしている、大手に入れておけば、今までのデータもあるから安心、と思いますよね。

小さな塾というのは「○○塾」のような個人経営の塾も含みます。小さな塾は、地域に根差しているから大手より細かな情報がわかりそう、小さいから生徒もそんなに多くないし一人ひとりを見てくれそう、先生の顔が見えるから安心、という良さがあります。

あるお母さんが上の子の時に経験した話です。大手が安心だろうと思ってあまり考えずに家から一番近い集団塾に入れた。しかし、成績が上がらず、友人が通っているという全部で2教室しかない小さな個別塾へ移った。もちろん、大手に払いきったテスト代や教材費などの年間の諸費用は返ってこないし、個別塾にも入会金や教材費を払った。わが子がずいぶんすらすら新しいテキストの問題を解いているなと思ったら、子供は「前の塾と同じテキストで、もう習ったところだからすらすらできる」と言った。見ると、表紙だけが違って、中身は同じだった。という話です。

実は、塾用教材を作成している出版社はそんなに種類がありません。学校教科書を作る出版社数と同じぐらいです。別料金を支払えば、表紙を巻き直ししてくれる出版社がほとんどです。だから、表紙には「○○塾オリジナルテキスト」などと書いてあります。小さな塾でもテキストを使わない塾はあまりないでしょうから、教材に関しては大手も地域の塾も変わりません。中学受験については大手の各塾が独自のテキストで行います。これはそれに代わるテキストがないからです。中学受験用の教材がしっかりしている大手も関東に3社ほどしかありません。関西の大手は10年前と同じ内容だったりするので、もう少し努力が必要です。もっとも信用できる中学受験教材は、教材だけでも通販で販売していますし、全国に提携塾を持っています。○と~を組み合わせたロゴで、全国的なテストも開催しているのですぐわかるかと思います。

次に、テストのデータですが、少子化の現在、一つの塾で独自のテストを開催したところで充分なデータ数は集まりません。だから、各都道府県にテスト会社というものが存在するのです。いろいろな塾と提携して、まとまったテストを開催しています。それが最も多くのデータ数を持ちますし、信頼できる情報を持っています。だから大手も地域の塾も参加します。同じテストを受けます。テストについても、大手と地域の塾で違いはありません。それなのに、塾によってテスト代が違うのはなぜですか、と思いましたか?そこに気づいてくれた方は素晴らしいです。受けるテストの一回分の料金をテスト会社のホームページや問い合わせで調べてみてください。どのテスト会社も、その金額とまったく同じか少し安い金額で塾に料金を請求しています。中には異常に高いテスト代を設定している塾があります。大手でもいまだにあります。塾は月の授業料は価格競争をします。赤字を目指しているわけではないので、価格競争でマイナスになった分は他で取らなければなりません。それが、教材費、テスト代、講習会費用となっていくのです。高校生対象の塾などは、教材費をもらいながら、学校の教材を使ったり、市販の問題集をお勧めといって買わせていたり、赤本をコピーしたりしています。赤本を買うぐらいにしか使ってないはずなのに、立派に教材費をとる塾は普通に存在しています。

 

さて、先ほどのお母様ですが、同じ教材だったとしても、わが子がテキストの1ページに書き込んでしまった、持って帰るときに角が少し擦れてしまったという理由で、テキストは表紙違いで2冊ずつ買うこととなりました。あまりにもよくあることなのか、子供の手前だからなのか、文句を言えないで、泣き寝入りをしている人は多いと思います。

 

最後に、講師の問題ですが、大手のほうが研修をしっかりしているイメージですね。1.でも書きましたが、研修については今はそんなに厳しくはやっていません。むしろ、誰でも同じレベルの授業ができるようにマニュアル化されつつあります。それは、塾講師というのは離職率の高い職業だからです。大手のほうが若くて活きのいい先生はいるでしょう。でも、離職する可能性はあります。企業としては、離職しても後任が苦労しないよう、同じレベルの授業をだれもができるようになっているのです。授業がマニュアル化されて、誰でも同じ授業をするのであれば、映像授業でもいいだろうというのが、映像授業が広がりつつある一因にもなっているのです。

かといって、地域の個人塾がいいかというと、それが大きな問題です。個人塾の先生は授業のライバルがいないのです。塾の先生は、生徒に勉強しろという割に、自分は全然勉強しないという人がものすごく多いのです。特に、ライバルのいない環境だと、授業技術の向上など考えにも上がってこないかもしれません。地域の小さな塾で、10年前と同じ授業をしている人がいて、授業中のギャグまで10年前と同じで、私を驚かせてくれる先生が結構います。化石ですね。中には堂々と「10年前と同じ授業してるのに生徒の食い付き悪いな。子供の質が悪くなったのか、自分が歳をとったせいか」と、しかも半分冗談交じりに言う人までいました。もうここまで来るとアドバイスするはずの私も言葉を失いました。

 

●まとめ

結論は先に書きましたが、教材、テストについては大手も小さな塾も内容は全く変わりません。中学受験だけはその例ではありません。講師については、大手でも小さな塾でも努力して優れた先生はいます。しかし、マニュアル化された先生も10年前から変わらない先生もいます。しっかりと見なければいけないポイントです。

もし、私なら、ということで言いますと、まず大手で検討することはないでしょう。大手は大手になるために多大な努力をしてきたと思います。その、草創期は良い塾だったと思います。しかし、一度大きくなれば、小さくはなりたいくないのがどの会社も考えることです。しかし少子化です。生徒の数が減っても売り上げを保つためには単価を上げるかコストカットするしかありません。無駄なテストや講座を頻発して、単価を上げ、講師の質を下げて、マニュアル化された若い講師を使って人件費を抑えるようになっています。その割に教育とは関係のないところに会社のお金を使ったり、クレーム対応でお金で解決したりとなかなかきれいではない部分が見えてきてしまいます。小さな塾でも、先生についてはよく見るようにします。親として、塾が良い方向に変わっていくように要望は出すと思いますが…